出版社:新潮社、新潮文庫(1997/08)
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評価:☆☆☆☆
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解説:
主人公は今昔亭三つ葉。落語家です。
性格は頑固でめっぽう気が短い。女の気持ちにゃとんと疎い。つまりチャキチャキの江戸っ子って奴。
そんな彼がひょんな事から、テニススクールの先生をしているどもり持ちの従兄弟に話方の相談をされます。
とはいっても、話し方のプロとはいえ先生の経験も無い彼。
仕方なく落語指南を始めますが、あらぬことに他にも生徒が集まってしまいます。
関西から越して来て仲間に馴染めない小学生、強面で毒舌の元プロ野球選手、元劇団員の女性。
一癖も二癖もある彼らとの落語教室が開かれますが・・・
落語小説ではないです、ただの小説です。(って書くと失礼か)
小説の売り文句は「読み後いいひとになっている率100%」
その言葉に裏打ちされるように、ほのぼのとして懐かしさを感じさせる内容でした
落語の知識等は全く必要ありません
文中に幾つか専門用語が出てきますが、ちゃんと丁寧に説明がありますし、
内容としては今を生きる人間ドラマです
読み終わった後はスッキリとした清涼感が漂います
誰もがなにかしら持っているコンプレックス
それを欠陥と感じてしまうのか、個性と感じるのか・・・
どうにかしたくても、どうにもならない
なにより一番辛いのは一番わかっている本人
周りの人達は当たり前のように受け止めてあげられるような
ちょっとした気遣いは、その人を少しだけ心を楽にしてあげられるのかなと、
それが「やさしさ」ってやつかなと
困っている人を助けるような、目に見える「やさしさ」とは違います
その人の気持ちを判ってあげられる、目には見えない「やさしさ」です
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